あれは、俺が高2の夏休み。
俺と友達4人は1学期の期末テストで赤点を取りまくり、
夏休みの最初の1週間はすべて補習授業に明け暮れていた。
そんな補習の最後の日に、
当時英語の女の先生が担当になった。
その先生は顔は「矢田亜希子」風でスタイルもよく
結構可愛かったが、性格がめちゃめちゃきつく、
俺が一番苦手としていた先生の一人だった。
最初の2時間くらいは、まじめに補習を受けていたが、
休み時間が終わって俺がトイレを済まし教室に帰ると、
先生1人だけ教卓の椅子にポツンと座っていた。
俺は、その時(あぁ~その他バカ4人帰りやがった。
しかも俺一人置いて)と思い、かなり憂鬱だった。
さすがに、その場でUターンして帰ることも出来ず、
自分が座っていた席につき、しばらくの沈黙の後、
クスンという泣き声が俺の耳に入ってきた。
俺は、何で!と思い、顔を上げると、
先生が教卓の上で泣いていた。
俺は意味が解らず、「えぇ~~!?」とか
「どないしてーん!?」とおどけながら、
先生に声を掛けると、先生は鼻をすすりながら、
「遠藤君(俺の仮名)まで帰ってこなかったら
どうしようって思ってたところに帰って来てくれて、
ホッとしたら泣いちゃった。。。」との事。
その笑顔交じりの泣き顔に、
俺はズッキューンと来てしまった。
俺は先生に、「皆どこにいるの!?」とか
絶対問い詰められるんだろうなと思っていたから、
先生の意外な言葉に、一番苦手な先生から、
可愛い女子大卒業したての女の子に見えてしまった。
前々から、顔はタイプだったものの、
性格がきつかったのであまりその先生と話したことが無かった。
しかし、俺の気持ちの中で可愛いと思ってしまった以上、
なんとか先生を励まさなければ、
という俺の勝手な正義感が働き、
「帰るわけねーじゃん!他のやつらは知んねーけど、
俺、先生の授業とか教え方とか、結構好きだよ」
と今まで思ってもいないことを口走り、
何とか泣き止んで欲しいと思い、
先生の目を見ながら、出来るだけやさしい口調で言ってみた。
すると先生は、涙を浮かべながら
「ありがと。。。でも遠藤君は絶対先生の事、
嫌いなんだろうなって思ってたよ」と、
俺の心の中を知っていたような口ぶり。
俺は焦って、「んな事ねーよ。先生結構可愛いし、
他のクラスの奴で、先生に憧れてる奴も結構いるよ」と返した。
実際、顔は可愛かったので、俺の友達は
「あぁ安達(先生の名字)とやりてぇ」
などとほざいてる奴はいっぱいいた。
そんなやり取りをして、補習が再開した。