当日は、戦争のような忙しさだった。彼女は流石に選ばれて
トレーナーになっただけあって、
レジ6台分のドリンクの注文をこなしてくれた。
長い手足を一杯につかってスピーディーかつ正確に仕事をしていた。
閉店は22:00、通常なら30分もあれば終わるが、
その日はどこもかしこも散らかり放題。
それでも応援者は電車もなくなるので帰ってもらった。
でも彼女は「新店のヘルプで慣れっこだから遅くなっても大丈夫^^。」
といって片付けとその後レジ閉め、
精算(当然クーポン回収400枚とか) で俺を手伝ってくれた。
「今日はお疲れ様。経費で落ちるからタクシーで帰りなよ。」
といったが、彼女は
「今日は遅くなるって言ってあるから。それよりお腹がすいた。」
と答えた。店を2人で出て俺の車で深夜のファミレスへいって食事をした。
彼女はかつての新入社員の俺が店長になったことを喜んでくれていた。
昔の思い出話から、最近彼女の店の店長が変わり、
トレーナーとして意見を述べても煙たがられていた。
彼女はお客様第一に考えて仕事をしているし、
教える際にもそれを徹底しているが周りのサポートもなく、
一人で頑張っている状態になっていて落ち込んでもいた。
「綾ちゃんは地区全体のトレーナーだから。」
と俺が励ますとみるみる眼が潤んできてにっこり微笑んだ。
会計(もちろんおごり)を済ませ、
「このまま送ってやるよ」といったら、
彼女はうれしそうにして店を出たとたん、
俺の腕に手を通して俺の方に頭を寄り添ってきた。
俺はびっくりしたが彼女がいじらしくそのまま車に向かった。
汗ばんだ額から彼女の体温が感じられた。髪は甘い香水の香りがした。
俺の心臓はバクバクだった。