外は薄っすらと明るく、電車も走ってる時間だった。
憧れの女性を抱いたという高揚感は微塵もなく、フワフワとおぼつかない足取りで帰宅。
「俺は他の男に惚れてる女を、しかも酔って寝てる間に抱いたんだ」
という後ろめたさと、さっきまでの淫靡な光景とがフラッシュバックしてちょっと複雑でイヤ〜な気分だった。
その日のバイトは正直行きたくなかったけど、逃げたらだめだと思いなおして出勤
彼女どう出るかとビビってたら(ほぼ100%軽蔑されてると思ってた)
コンビニの袋にジュースを2,3本入れて彼女が歩いてくる。
まごつく俺に躊躇なく近づいてきて
「昨日はありがとう!目覚ましまでかけてくれたんだね、二日酔いじゃないかと思って、これ、飲んでね!」
昨日の泥酔がウソのように破顔一笑、ピッと右手をあげ、黒髪を揺らしてくるりと背中を向けて離れていく。
俺のこと怒ってないのかな?
昨日のことは覚えて無いの?俺のこと、ちょっとは好きなんでしょ?
聞きたいことが頭を駆け回って戸惑う俺。
来たときと変わらずしっかりとした足取りで歩いていく彼女。
俺を気遣ってくれて嬉しい反面、
一点の陰りも見せない彼女の笑顔が
「昨日のことは忘れてね」
との明確なメッセージなんだって気づいてしまい、
多分半泣きの顔で彼女を見ていた俺。
彼女とはそれっきり話すこともなく夏は終わり、バイトは解散。
あの夜のことをどう思ってたのか知るチャンスは失われてしまいました。