久野は真紀さんの背中を見ながら考えた。このまま他人の手に渡してしまうのか。
そんなの悔し過ぎる。
これまで何回セックスしてきただろう。
オレの方が先に付き合っていたのに…。
久野は突発的に馬乗りになり、真紀さんの首を絞めた。
「キャーッ、何するの?」
ためらうことなく手で首を絞め続け、トドメとばかりにベルトも使って絞めた。
真紀さんはぐったりして動かなくなった。
心臓が止まってから慌てふためき、他人の仕業に見せかけようと全裸にしてバスタブに運んだ。
だが、それ以上何をしていいか分からず、カギを閉めて外へ飛び出した。
その翌日、真紀さんが夕方になっても出勤せず、電話も通じないことから職場の上司が不審に思い、アパートを訪ねた。
交番の警察官に相談し、大家立ち会いのもとドアを開けたところ、真紀さんが浴室で死んでいるのが見つかった。
警察は殺人事件とみて捜査を開始。
アパートの周囲には規制線が張られ、何台もの覆面パトカーが駆け付けた。
そこへ久野が戻ってきて、「事件がバレた」と直感。そのままタクシーに乗って逃亡した。
警察は久野が何らかの事情を知っているとみて行方を追った。
久野はかつて真紀さんと旅行したことがある温泉地の路上を、フラフラと歩いているところを地元の警察官に見つかった。
挙動不審だったため尿検査をしたところ、覚醒剤の成分が検出された。久野は管轄署に護送され、殺人と覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕された。